研究概要 |
今年度においては,補文標識とwh-agreementの相関関係,補文標識の移動に関する通時的、共時的言語差異,補文標識の出没に対して,文献,収集した言語資料,そしてコーパスを基に理論的考察を行った。研究の結果,パラオ語やキクユ語等では顕在的wh-agreementが観察されるが,英語ではそうしたwh-agreementが非顕在的に行われていることを示し,その帰結としてthat、痕跡効果他多数の例が説明できることを詳細に示した。また,補文標識の移動には,主要部に明示的な要素を要求する制約と,移動の経済性を要求する制約の相互作用,及びその階層差が関連していることを指摘し,補文標識の分布及び二重詰めCOMPの共時的、通時的言語差異に統一的説明を与えることで,補文標識の体系の均一性と多様性を明らかにした。本研究は補文標識の分布やその体系に関して,従来の分析の問題点を解決し,さらにこうした体系内で観察される附随的統語現象に対する様々な帰結が得られる点で意義がある。これらの研究成果は,平成17年,18年の過去2年の研究内容と共に研究成果報告書としてまとめた。
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