平成19年度は、3年間にわたり中国東北各地の民族学校(主に朝鮮族中学)で、日本語教育を担当する教員にインタビューした記録を文字化し、質的研究法の方法論をもちいて分析をおこなった。この分析と検討により、いままで、もっぱら日本人と日本人社会の視点から記述されてきた日本語教育史研究に、学習者とその学習者が所属するコミュニティからみた日本語教育史、すなわち、学習者の立場から日本語数青史を考察する視点をもつことが必要であることを論証することができたと思われる。その新しい観点にもとづいて3月末までに2本の研究論文を執筆し、学会誌等に投稿した。現在、審査結果をまっているところである。 本研究の調査研究結果は、すでに平成17年度「中国朝鮮族の継承語維持方略と日本語教育」『社会言語科学3号』、平成18年度「日本語教育の<自律>と<変容>-中国東北地域における<満州国>後の日本語教育の意味-」『言語政策2号』の二つの学会誌に学術研究論文として発表している。平成19年度にまとめた2本の論文は、インタビュー・データを中心に、分析と考察をおこなって、前年度までの研究成果を発展させたものであるともいえる。 本研究の最終的な研究成果は、それらの論文であるが、そのほかに、インタビューを文字化した基礎資料として『東アジア地域における1945年以降の日本語教育の自律と変容に関する調査研究(資料編)』を印刷し、現地調査の直接の成果としてのインタビュー記録をまとめた。
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