本研究は、地方で学ぶ日本語学習者に対する日本語教育における「地域語(方言)」の扱い方を考え、必要な指導法と教材を開発することを目的としている。 最終年度の今年度は、意識調査や録音したデータの文字化ならびに分析をすすめ、日本語教育のなかで「方言」をどのように扱うべきか指導のモデルを考案し、教材を試作し、授業での実践を試みた。 これまでの日本語学習者の意識調査から、この地方で学ぶ学習者の多くは「方言」を学ぶ必要性を感じていることがわかっている。その理由は、地域住民とのコミュニケーションを円滑にするため、あるいは、アルバイトなどの日常生活上、「方言」がわからないと困るという方言のコミュニケーション上の機能に起因するものが多い。逆に、「方言」を学びたくないという学習者は、他の地方では必要ないとか、共通語の学習を阻害すると「方言」を否定的にとらえており、現在住んでいる地域の母語話者とのコミュニケーションを拒絶しているような傾向が多くみられた。そこで、指導法の開発においては、まず、「方言」そのものを言語的に学ぶのではなく、方言を通して日本語や日本文化への興味を喚起し、地方で学ぶことを肯定的にとらえ、日本語学習への意欲を高めることをねらいとした。 指導のモデルに基づき試作した教材は、立命館アジア太平洋大学上級1コースで使用した2007年度春学期、秋学期のコースパックの一部とし、授業での実践を行った。また、2008年1月の短期教員研修のクラスでも授業実践を行った。授業の前後にはアンケート調査をし、学習者の反応と授業の評価を確認した。その結果、授業によって、71.4%が方言や日本語学習への興味が高まったが、逆に12.9%が、方言は難しい、学びたくないと思うようになったことがわかった。地域語を通じて、自分の住んでいる地域や日本語への興味を高めるという点では成果が認められるものの、方言の提示の方法についてなど、今後も引き続き、検討し、地方で学ぶ学習者の意欲を高める指導法を開発していきたい。
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