本年度も、引き続き通訳シミュレーションによるデータ収集を行なうと同時に、通訳関連単語リスト(辞書)データ公開に向けての整備作業を行なった。 通訳シミュレーションについては、プロ通訳者及び志望者、外務省やドイツ大使館職員らにお集まりいただいて東京大学駒場キャンパスのDESK(東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター)の支援を得て毎月の月例会を、さらには産業技術総合研究所のご協力も得て2回の集中合宿を行なった。また、ヨーロッパ初の日本語を含めた通訳者養成コースを立ち上げようとしているハイデルベルク大学とも連携して、ネットで結んだ共同会議も行なったり、講師を招待したりした。専門用語データベース(http://germanistik.jp/woerterbuch/)や誤訳のデータベース(http://germanistik.jp/fdb/)のネット上での運用公開は、未だ試行毅階ではあるが、さまざまな試行錯誤を経て困難な点が分かってきたことを踏まえ、専門用語集の分野別整備と訳語の質的向上作業に着手した。これらについては残念ながら、本研究プロジェクト終了時にまとまった成果として完結するわけにはいかない状況であるが、その社会的ニーズに鑑み、今後も継続的に作業を行ってゆく。また実際に養成される質の高い日独通訳者たちは、本研究プロジェクトからすれば単なる「副産物」に過ぎないが、本研究が生み出す大きな社会的成果である。私はここ数年の活動を通じて日独両言語間の通訳者の平均レベルを確実に向上させて来られたと自負しており、今後も「すぐれた日独通訳者」という副産物を社会に還元してゆきたい。
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