研究課題
4年計画の2年次は、初年度に実施したリコール(筆記再生)の実証データを、代表者が主催する「筑波リーディング研究会」において次の2つの学術論文にまとめた。このリコールは、次年度以降、心的表象モデルに基づく実証実験を行う上で核となる手法である。(ARELE論文)読解テストとしての筆記再生課題は、質問項目の難易度に左右されないという利点がある一方で、記憶テストではないかという批判が絶えない。記憶力の影響を軽減するために課題遂行時に文章の一部を検索手ががりとして与えることがあるが、これらの手がかりの性質と引き出される情報との関連は明らかではない。本研究では2つの実験から、(1)読解熟達度によって再生される情報の質(重要性)に違いがあるか、および(2)再生されやすい情報と再生されにくい情報をそれぞれの手がかりとして与えることで、筆記再生にどのような影響が見られるか、の2点を検証した。その結果、手がかりのない状態でも再生可能な情報が与えられた場合には手がかりが余剰な情報となり、再生を促進しないという結果が示された。(JACET論文)読み手が読解中に構築し保持している心的表象へのアクセスが不可欠となるテストとしてのリコールテストに対しては、表象として残る最小の意味単位を反映した採点方法として命題分析が適すると考えられているが、L2における多くの研究ではアイデアユニットが用いられている。本研究では命題単位とアイデアユニット単位による結果の違いを検証した。その結果、どちらの採点方法であっても、L2で書かれた文章のリコールをL1で行った場合にはL1-L2間の統語構造的な相違が影響することが分かった。L2テキストの内容理解を測るためには、その影響を最小限に抑える必要を考慮した場合には、主語の脱落の許容や、文情報の統合を許容する度合いの高いIU単位の採点方法を採用した方が良いと結論付けた。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
ARELE(全国英語教育学会) 18(印刷中)
JACET BULLETIN (大学英語教育学会) 44
ページ: 85-99
『新しい英語教育のために : 理論と実践の接点を求めて』(成美堂)
ページ: 244-255
言葉の絆(開拓社)
ページ: 563-576