研究概要 |
本研究の目的は,第二言語としての英語の習得過程において,日本人学習者(成人)はどのような処理(解析)方略を用いて文の理解を行っているのかを解明することである。特に,本研究は,日本語と生成過程が大きく異なり,そのために学習が比較的困難であると言われている「関係代名詞節構文」と「wh疑問構文」に焦点をあて,これらの構文を理解する反応時間を測定するオンライン実験を用い,英語母語話者との比較を通して第二言語学習者の文処理(解析)過程を明らかにするものである。 第二言語習得研究においては,第二言語学習者が最終的に母語話者と同様の言語能力(知識)を獲得することが出来るか否かに関する議論があり,まだ結論は出ていない。関係代名詞節構文を用いて,4つの異なる第一言語を持つ実験参加者集団に長距離wh移動を用いた文理解(処理)の実験を行ったMarinis, Roberts, Flelser and Clahsen(2005)は,第一言語において英語同様,長距離wh移動に課せられた制約(下接の条件)を持つ実験参加者においても,英語母語話者と同様な句構造に基づく処理メカニズムを用いてはいないと結論付けている。この結果はMarinis達の先行研究を支持し,同時にDirect Association Hypothesisの主張に合致する。一方,Trace Reactivation Hypothesisを支持する研究者もおり,今度更なる実験によってデータを増やし,どちらの仮説がより説得力があるか調査していく必要がある。 今後は更なる先行研究の概観および,課題文の最終チェックと実験プログラムの設定を行い,実験を始める予定である。
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