研究概要 |
本研究では、第二言語習得理論に基づいて、第二言語運用能力を効果的に伸ばす指導形態であるフォーカス・オン・フォームを開発し、その効果を実証的に検証することを目的とした。日本人大学生と韓国人大学生間の異文化間交流をフォーカス・オン・フォームの枠組みとし、真正の言語使用環境の中に、言語形式の運用能力を伸ばす指導を組み込む形態を構築した。学習者の注意を言語形式に向けさせる指導にはリフォーミュレーションを採用した。これは、学習者が書いた文章を、教師が内容を変えずに誤りを修正して書き直し、学習者に元の文章と書き直された文章の比較させるものである。学習者に間接的否定証拠と肯定証拠を同時に与えることができるため、学習者の仮説検証および認知比較を効果的に促すと推測することができる。 2006年から2007年にかけ、22組の日本人英語学習者と韓国人英語学習者の間でインターネットによるメール交換を2ヶ月間行った後、ソウルで3日間の交流を行った。日本人学習者が書いたメールに対し、研究代表者がリフォーミュレーションを行った。フォーカス・オン・フォームとしてのリフォーミュレーションの効果を調査するため、ライティング・テストおよび文法テストを事前,直後事後および遅延事後テストとして交流の前後に実施し、日本人英語学習者の英語運用能力を正確性、流暢性、複雑性の観点から測定した。非母語話者同士の英語使用、異文化間交流などについての意識の変化も質問紙法によって調査した。2007年度にはこれらのデータを量的、質的に分析し、次の結果を得た:異文化間交流を基盤としたリフォーミュレーションによるフォーカス・オン・フォームは,日本人英語学習者の英語運用能力を、特に、流暢性(有意傾向)、文法運用能力、文の複雑性の面において伸ばす。英語学習者の英語使用および異文化間交流に関する意識を高める上でも効果が見られた。
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