本研究では、LSP(Languages for Specific Purposes)教育の理念と方法をわが国の外国語(主に英語)教員養成と研修に導入し、先進的なシステムを構築しようと意図した。主に次の4つの観点にもとづく質的研究を実施した。1)英国の教員研修に関する実態調査等、2)アンケート調査による外国語教員の意識調査実施、3)教員研修の実態調査、4)LSP及びCLILの実態とニーズ調査。調査等によって明らかになった日本の中学校英語教員の意識の特徴は次のようにまとめられる。1)実用的な英語力指導の重要性を認識、2)「外国語の知識と技能」と「授業の知識と技能」の両方が必要、3)教育全般の活動を重視、4)現職研修に至る過程や内容に関しての要望、5)ESP、仕事などに関連した指導よりも基礎基本の重視、6)CLILに対する低い関心、7)研修内容にLSP(ESP)導入の意欲、8)中等教育の教育者としての強い意識、9)外国語教員の専門性は「外国語の知識と技能」と「授業の知識と技能」から構成、10)外国語指導に関連する研修機会の増加、11)約半数が他教科の教員との違いを意識、12)様々な学習者や分野に対応した外国語教員養成と研修の必要性に共通理解。これらの調査結果をもとに、「LSP教員養成、研修システムのスタンダード」として次の10項目をまとめた。1)外国語の知識と技能、2)外国語授業運営の知識と技能、3)学習者の外国語学習目標の明確化、4)学習者の外国語学習ニーズに沿ったカリキュラム設計と評価、5)学習者の学習履歴の把握と学習方法の支援、6)学習段階、科目内容、分野、仕事などのディスコースコミュニティの理解、7)教育目標、学校文化の理解と外国語教育の専門性、8)外国語使用のジャンル(場面や社会文化など)に対する理解、9)初等教育から高等教育まで系統的外国語教育理解、10)評価測定方法に関する知識と技能。
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