研究課題
基盤研究(C)
幼児の語彙獲得には、ワーキング・メモリーにおける音韻ループが重要な役割を果たしていると言われている。この音韻ループの発達は、語彙の反復能力と語彙サイズにより、ある程度観察可能であると考える。そこで、無意味語反復の課題を通して、外国語の学習の基本となる反復能力の発達過程と母語の音韻ルールの獲得過程の関連を探る。さらに、母語の無意味語反復の誤りデータを分析し、幼児と児童の母語の音韻ルールの構築過程を確認すると共に、英語を学習した場合における、獲得された母語音韻ルールの英語音声への干渉の程度と反復能力を測ることで、英語学習の適切な開始時期を明らかにすることを目的としたコホート研究調査を実施した。平成17年度には、日本語を母語とする3-7歳の幼児・児童を対象に、日本語の無意味語反復調査と絵画語彙能力テスト(Picture Vocabulary Test)を行い、以下の結果を得た。日本語において、3,4歳児においては語彙能力と無意味語反復能力に相関関係がみられ、実年齢による反復の正答率についても、年齢が上がれば反復正答率も上がる。しかし、語彙年齢と実年齢が共に上がっても、5歳になると反復正答率が横ばい状態になる。これは、反復能力と語彙年齢の相関が8歳まで続く英語圏とは異なる傾向である。日本語の場合に反復能力が落ちるのは、母語の音韻体系がかなり早く確立し、それが無意味語反復の際に影響を与え、正答率が落ちることに関係する可能性が考えられる。平成18年度調査においては、無意味語反復能力の回復は実年齢84ヶ月(7歳)、語彙月齢が100ヶ月を超えたころであることが分った。4歳児の場合には反復能力の高低差が激しいが、7歳児になると、語彙能力と反復能力に個人差が少なくなる。この反復能力回復時を待って、英語教育を開始するのが妥当ではないかという一応の結論を得ることができた。
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