本年度は本研究の二年目に当たり、主に前年度の調査内容を纏めることと、平安期公卿日記にある親族呼称を調査することを行った。前年度に調査した記紀、律令、六国史における親族呼称の調査内容について研究発表を行い、意見聴取を行った((1)「記紀における親族名称について」第十回日本文学年会 2006.8.14於中国四川大学、(2)「律令における親族名称について」「2006北京大学日本学研究国際シンポジウム」2006.10.22於中国北京大学)。また親族組織の体系と呼称体系の問題として、中国の五服制度と律令の親等制の関連性を取り上げ、「養老令における親族呼称について-五等親条と服紀条を中心に-」(『言語文化論集』第二八巻第2号 2007.3)という論文を発表した。 本年度も引き続き古代日本の漢字文献にある親族名称・呼称の調査を行った。主に平安期の公卿日記を対象として調査した。公卿日記の場合は、上代の漢字文献と違い、用語自体が日本的になっており、呼称面においても、漢型呼称と日本型呼称が混在しているので、古代日本の親族名称・呼称の特徴を見る貴重な史料と考えている。現時点では、『権記』(991-1011)、『御堂関白記』(995-1021)、『小右記』(978-1032)といった十世紀末から十一世紀半ばごろに書かれた平安時代の公卿日記を中心に調査している。 調査を通して、構造的に両系統の親族名称、呼称と婚姻形態、居住の関係を明らかにしようとする本研究の意味を再確認することができた。中国の家族・親族構造に根ざした漢語系の親族名称の導入と応用、日本の親族名称、呼称と婚姻居住、家族・親族の関係について調査内容を纏めることによって、より確実な視点を獲得したいと考えている。
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