本研究は、朝廷儀礼をめぐり朝廷(天皇・公家)と幕府(将軍)と藩(大名)の三者がいかなる関係を取り結んでいたのか、その関係構造とその歴史的な変化を通史的に追求することを目的としている。 本年度は、最終年度なので、これまで入手した焼き付け写真による史料に検討を加えることを中心にすえた。なお、このような作業の前提となる朝廷構成員の動向を確認できる貴重な史料として、宮内庁書陵部所蔵の「禁裏詰所日記部類目録」を紙焼き写真で入手し、天理大学天理図書館へ出張して、関係史料の補充的な調査を実施した。 研究成果としては、研究代表者藤田覚編『史料を読み解く3近世の政治と外交』(山川出版社、2008年)を刊行し、連携研究者の山口和夫、堀新らと、近世朝廷の仕組み、法制度、武家官位、朝幕関係に関する基本吏料に厳密な検討を加え、広くその成果を公表した。 また、3年間は分担研究者として、1年間は連携研究者としてともに研究してきた中川学は、『近世の死と政治文化-鳴り物停止と触穢』(吉川弘文館、2008年刊)を公表し、為政者の死の儀礼を通して朝幕関係を論じ、堀新は『信長公記を読む』(吉川弘文館、2008年刊)において、近世初期の武家(織田信長政権)と朝廷・天皇との関係を、「信長公記」により論じた。このように、本年はこれまでの研究成果の一端を公表することが出来た。
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