本研究は、1932年に作り上げられた満洲国の各種調査機関が、満洲国の政策立案にいかに関与していたのか、また、それらの研究機関と関東軍参謀部、満鉄調査組織、国内の調査機関などの関わりを明らかにしようとすることをめざしている。このためには、満洲国や日本国内に創設された多くの調査機関でいかなる調査が行われたのか、また残されている調査報告にいかなるものがあるのかをまず明らかにする必要がある。 本年度は、こうした調査資料を数多く所蔵する中国の吉林省档案館、吉林省社会科学院満鉄資料館、中央研究院近代史研究所の史資料部門の担当者を招聘して、国際ワークショップ「中国東北と日本」を新潟大学において開催し、それぞれの機関が所蔵する関連史資料の状況を明らかにした。あわせて、大学の経済学部資料室スタッフと旧植民地関係研究者による第6回「旧植民地資料に関するワークショップ」を新潟大学において開催し、日本国内の資料状況を明らかにした。 これらの成果を踏まえて、関連資料を収集した。その際に、東京と満洲国の首都新京に事務局が置かれ、満洲国の農業政策に影響を与えた日満農政研究会の資料の収集につとめた。また、満洲国の農業・開拓政策と調査機関との関連を明らかにする基礎作業として、前年度に編纂した「満洲農業関係文献目録(未定稿)」の増補作業を進めた。本目録は最終年度に完成予定である。 研究面では、満鉄の調査組織と国策調査の関わりに関する論考「日本の中国調査機関-国策調査機関設置問題と満鉄調査組織を中心に-」、日本の中国調査機関の調査報告書を所蔵する機関の目録の解題「戦前期日本の中国関係蔵書目録」および「満鉄刊行物の現在」を発表した。
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