研究課題
基盤研究(C)
前年度は出雲地方を中心に調査・分析してきたので、今年度は、石見地方のたたら製鉄業について調査・史料収集をし、出雲地方との比較分析をした。さらにオランダ・ドイツへも出張し、近世期におけるヨーロッパ唯一の交易国であったオランダと日木が鉄の交易にどのようにかかわっていたかをみた。また、ドイツでは世界遺産であるランメルスブルク鉱山路を調査してきた。石見地方においてもたたら製鉄業はさかんであった。江の川沿いの天領には天保8年(1837)、17のたたら場を確認することができた(『出雲と石見銀山街道』)。その規模も大小さまざまで、年間銑定高(生産許可高)は、400駄のものから2000駄以上のものまでいる。大規模たたらの代表的なものは、江津市川平町の恵口御たたら、邑智郡川本町の土居原たたら、南佐木たたらなどである。浜田市金城町一帯にも多くのたたらがあり、明治15年の絵図で10ヶ所を確認できる(金城町歴史民俗資料館)。今回は、大田市仁摩町宅野の藤間家の史料を中心に分析した。藤間家は、宅野湊にあって、近世期廻始業を営み、一方で大規模なたたら経営を行っていた。その史料が大田市大森町の銀山資料館に所蔵されており、調査することができた。藤間家の鑪は速水たたらといい、そのたたらが規模であったことは、残された史料からも理解できる。史料の中には、たたら生産従事者である労働者の規則である天明4年(1784)の「速水鉄山所掟香」がある。これは時期的に早い時期のたたら労働者規則であり、「掟」である。奥出雲町上阿井の櫻井家槇原たたらの「山内定法書目」よりも61年も早い。しかもかなり詳細であり、藤間家たたらの大規模さを物語るものである。また、「仕切状」からは、生産された鉄が「越中伏木」、「羽州本庄」、「羽州酒田」など、東北、北陸へ盛んに移出されていたことが分かる。
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宗門改帳からみる山陰の近世社会(2) 2006年版(印刷中)
奥出雲たたら経営の特徴(鉄の歴史村フォーラム2006) 2006年版
ページ: 1-15
A early modern society of San-in region, viewed through The Shuumon-Aratame-Cho : Japan's Population registers(2) (The book of 2006)
Iron history village forum (The book of 2006)
宗門改帳からみる山陰の近世社会(1) 2005年版
ページ: 33-34
A early modern society of San-in region, viewed through The Shuumon-Aratame-Cho : Japan's Population Registers(l) (The book of 2005)