(1)近世後期、とりわけ天保期の藩財政の動向を明らかにするため、基礎的な史料の収集をひきつづき行った.。主要には山口県文書館蔵毛利家文庫を対象とした。 (2)地域社会構造のうち、流通史にかんしては、萩藩における「越荷方」について研究成果をまとめ、越荷方が萩藩の倒幕資金の源泉となったという通説には問題の多いこと、必ずしも越荷方が成功していた訳ではないことを明らかにした。また、漁業及び海運業と藩権力・藩財政との関係についても分析を進めた。 (3)また城下の社会構造の分析も進め、武家屋敷の動向について、主として毛利家文庫蔵の絵図史料を使って、移動の状況を調査した。そして、非常に移動が頻繁であり、借家としての運用も広汎にみられたことを明らかにした。その前提には、とりわけ18世紀半ばから深刻化する藩財政の動向との関連が予想された。 (4)藩財政の推移や領国の社会構造の歴史的推移を概観するうえでの基礎史料となる「御書付控」頭書の翻刻作業を進めた。
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