研究概要 |
本年度は、1生業論の理論的検討、2中世生業語彙の収集、3現地調査を実施した。 1.生業論の理論的検討 まず、日本中世・近世史を中心に生業論の登場した背景と理論的な特徴・展開過程を明らかにし、6月に国立歴史民俗博物館で「歴史学における生業論の登場と変遷」と題する報告をおこなった。また、9月に発表した論文「文献史学からの環境史」、11月発表の「歴史学的山村論の方法について」でも生業論の観点を導入した研究の意義について考察を加えている。なお、この二論文で課題とした「自然と時間」の問題については、7月に英国のリーズ大学で開催されたInternational Medieval Congressでの報告‘By-Laws : Records of Legal Control on the Environment in Medieval Japan'で具体的に論じ、報告内容は英文はTHE HASKINS SOCIETY JOURNAL, JAPANに、邦文は『くまもと歴史と教育』に発表した。 2.中世生業語彙の収集 12世紀〜13世紀の公家の日記類を対象に、生業に関わる語彙を収集し、データベースを作成した。この語彙収集とパソコンへの入力は研究協力者に作業を分担してもらい、謝金を支払った。検索した日記は11点で、データー化した記事数は1209件にのぼった。 3.現地調査 7月に熊本市で阿蘇家文書の原本調査と肥後の地域史料収集をおこない、ついで熊本県宇土市で郡浦社領の実地調査を実施した。つぎに8月には福井市で若狭湾の歴史・生業関係の文献収集、福井県小浜市の田烏地区で海村調査を実施した。11月には熊本県阿蘇市で阿蘇社領の地名調査をしたあと別府大学に移動し、九州の環境利用について文献史学・考古学・民俗学・植物学の各研究者と意見交換をおこなった。さらに熊本市に移動し、7月の調査に続く作業を実施した。
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