本年度は、1 中世生業語彙の収集、2 中世魚介類消費に関する研究、3 中世阿蘇社の資源活用に関する研究、4 環境利用に関する現地調査を実施した。 1.中世生業語彙の収集 15世紀の公家・寺院の日記類を対象に、生業に拘わる語彙を収集し、データベースを作成した。この語彙収集とパソコンへの入力は研究協力者に作業分担してもらい、謝金を支払った。検索した日記は5点で、データ化した記事数は3033件にのぼった。 2.中世魚介類消費に関する研究 滋賀県立琵琶湖博物館が作成した中世魚介類データベースの内容分析と考察を進め、6月に同館で「中世後期の魚介類消費とコイ科魚類」と題する報告を行った。この研究に関連して、同館の企画展示「湖辺〜水、魚、そして人〜東アジアの中の琵琶湖」の企画にも参加した。 3.中世阿蘇社の資源活用に関する研究 中世阿蘇社が地域の資源を何を目的にどのように活用したのかを考察し、その成果を5月に大阪市立大学日本史学会で「中世阿蘇社の地域編成」と題して報告した。この研究に関連して、熊本県立美術館の特別展「阿蘇の文化遺産展」の企画にも参加し、9月に同館で「中世阿蘇社と阿蘇文書」と題する報告も行った。 4.環境利用に関する現地調査 5月に熊本県の阿蘇市と南阿蘇町で芹と景観の関係を探る調査を実施し、その成果を6月に生き物文化誌学会で「生き物と地名」と題して報告した。8月と12月には中世阿蘇社領の故地である阿蘇市竹原・小野田両地区で、環境利用に関する総合的な調査を実施した。また、1月に熊本県菊池市の原・下河原両地区で、環境の利用と認識を示す通称地名の聞き取りによる収集を行った。3月には大分県の別府市、由布市、竹田市、九重町で湿原の植生観察と山間地域の景観調査を実施し、発掘調査遺跡の踏査も行った。
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