研究課題
本年度は研究期間の3年目にあたり、昨年度に引き続き、当該研究を進めるために必要な学術図書、特に自治体史や関係史料集を購入するとともに、史料調査用の撮影機材を整備した。史料調査は、島根県・岡山県・山口県・三重県で実施した。島根県では、石見銀山資料館や温泉津の個人宅で石見銀山・温泉津関係の古文書調査を実施し、閲覧・撮影して研究素材の蓄積に努めた。特に、中近世移行期の温泉津「湯役」の徴収を担う立場にあった伊藤家資料は貴重で、撮影した写真をもとに、現在翻刻作業を進めている。岡山県では、金光図書館を訪ね、未紹介の豊臣秀吉朱印状3点のほか、神祇伯宛の江戸幕府将軍知行宛行状写の存在を確認した。また、山口県文書館で伊勢神宮御師の村山氏関係文書の写本類を閲覧・撮影した上で、三重県伊勢市の神宮文庫を訪ね、村山文書の原文書を閲覧した。毛利氏をはじめとする家臣らの伊勢信仰を支えただけでなく、毛利氏の兵糧調達など財政運営にも一部関与した御師村山氏関係の文書は重要で、中近世移行期の社会経済の構造的変化を分析する上で貴重な資料群であり、今後積極的に活用していく予定である。研究成果としては、一昨年秋に出版した『戦国織豊期の貨幣と石高制』(吉川弘文館)の姉妹編として「統一政権の誕生と貨幣」と題する論考を鈴木公雄編『貨幣の地域史』(岩波書店)の第五章として執筆・発表した。これは、戦国期から織豊期を経て徳川政権成立期に至る貨幣(金・銀・銭)や米の状況、そしてそれらへの地域大名や中央政権の政策的対応について、西国・畿内・東国という地域区分のもとに明らかにしたもので、本研究の中間報告的な内容を持っている。このほか、地域研究として従来から進めている安芸国厳島をとりまく社会経済の研究成果として、「中近世移行期の厳島と町衆」と「厳島門前町と住人構成」と題する論考を執筆・発表した。これら成果をふまえ、最終年度となる来年度は、本研究の総括をおこないたい。
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厳島研究 第4号
ページ: 1-8
中国四国歴史学地理学協会年報 第4号(掲載決定)
International Journal of Asian Studies, Cambridge University Press 4,2
ページ: 225-240