本年度は、研究期間最終年度にあたるため、これまで進めてきた各方面の研究の総括をおこなった。 昨年度に引き続き、当該研究を進めるために必要な学術図書や関係資料集を購入するとともに、学術論文も大学図書館を通じて文献複写により入手した。また以前、調査・写真撮影していたモノクロ35mmフィルム画像の電子化を進め、史料翻刻とともに花押の照合作業を実施した。 史料調査は、主に島根県と山口県で実施した。島根県では、ここ数年間継続している石見銀山資料館や温泉津の個人宅での石見銀山・温泉津関係の古文書調査を実施し、閲覧・写真撮影により新史料の収集に努めた。特に、石見銀山資料館に寄託されている「阿部家文書」「三谷家文書」「清水寺文書」「本城家文書」(いずれも石見銀山関係古文書)の原本を確認できたことは重要で、料紙確認・法量計測・写真撮影をおこない、現在翻刻作業を進めている。また、山口県では主に山口県文書館で、「冷泉家文書」の原本により元就と輝元の袖判を、「閥閲録差出原本」により『閥閲録』所収文書の表記を確認して、学会報告のための準備作業をおこなった。 研究成果としては、数年間実施してきた古文書調査やフィールドワークをふまえて、「戦国大名毛利氏の石見銀山・温泉津支配」と題する研究報告を、広島史学研究会大会日本史部会でおこなった。 現在、報告内容を原稿化して学術論文として公表する準備を進めている。また、昨年調査した温泉津伊藤家に所蔵されている中近世移行期の温泉津「湯役」関係文書については、翻刻作業を継続的に進めていたが、数種ある写本の対照表を兼ねた文書目録を作成することにより、一連の作業を終えた。
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