盛岡藩家老席日記である「雑書」は、寛永21年(正保元年、1644)から天保11年(1840)までの約200年間分がある。この「雑書」を中心とする藩政関係史料の調査研究を推進することによって、従来の誤りを訂正すると同時に新知見を提供し、盛岡藩政史研究の飛躍的な発展と日本近世史研究に寄与することを目的とした「盛岡藩政史関係史料の総合的研究」では、従来からの「雑書」の翻刻に加えて、『盛岡藩家老席日記雑書』第19巻(寛保4年〜延享2年)、第20巻(延享3年〜寛延元年)、第21巻く寛延2年〜寛延3年)を刊行することができた。次いで、未公刊史料の中から特に重要と判断した「自然未聞記」 (岩手県立図書館所蔵)を解読翻刻した。これは宝暦四年〜同七年までの天候、物価、凶作、飢饉等を記録した貴重な史料である。これらによって、盛岡藩の政治、経済、文化等のあらゆる分野が具体的に究明されることになり、盛岡藩政史研究の飛躍的な進展が期待される。その具体的な成果の一例として、「盛岡藩領における宝暦五年の飢饉」(『東北福祉大学研究紀要』第30巻)、「徳川綱吉政権と盛岡藩」 (同前、第31巻)などを公表することができた。 本研究は今後も継続して行うことにしているので、「雑書」の翻刻を中心とした作業に全力を尽くす覚悟である。具体的には、平成21年までには『盛岡藩家老席日記雑書』第22巻の刊行を予定している。
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