本年度は、本研究の最終年度にあたるため、研究成果の公開に重点を置き、著書2冊、雑誌論文2本、国際学会報告1報、国内研究会報告1報の成果を挙げることができた。 本年度の最大の成果は、「天聖令からみた唐日奴碑売買の諸問題」という国際学会報告及び論文において、唐代と古代日本の奴碑売買の違いを法規定の面から明らかにし、その背後にある社会の実態の相違について指摘できたことである。本論文では、天聖令や吐魯番出土文書など新出史料を利用し、唐代奴碑制が外国からの奴婢輸入に依存する部分が大きかったことを解明できたことも重要な成果と考えている。 本研究を進める上で前提となった『唐会要』と「北宋天聖令」に関する基礎研究を『唐王朝と古代日本』に収め、公刊できたことも成果に挙げたい。「北京大学図書館李氏旧蔵『唐会要』の倭国・日本国条について」という基礎研究では、通行本の不備を抄本系の『唐会要』により補う必要があることを述べたが、これに基づき抄本系『唐会要』奴婢条を検討するより『新唐書』百官志の奴婢規定を正しく解釈することが可能となつた。この成果は、昨年度に「《新唐書・百官志》中的官賎民記載」(戴建国主編『唐宋法律史論集』)として公表した。また、「北宋天聖令」の基礎研究(「北宋天聖令による唐関市令朝貢・貿易管理規定の復原」)により、宋令には宋代の実態から乖離した唐令規定が残存していることを明らかにした。この成果を利用することで、上記の奴婢売買関連規定の唐令復原が可能となった。 本研究の成果は研究書(単著)にまとめる予定であり、来年度中の公刊を目指している。
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