研究課題/領域番号 |
17520462
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | (財)元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
五代 雄資 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 主任学芸員 (10195927)
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研究分担者 |
村田 忠繁 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 主任学芸員 (50210042)
川本 耕三 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 主任研究員 (10241267)
石井 里佳 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 主任研究員 (30250351)
雨森 久晃 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 主任学芸員 (70250347)
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キーワード | 印刷 / 近代 / 番付 / 新聞紙 / スポーツ / 政策 / 地域 / 情報 |
研究概要 |
これまで、全国的な近代印刷物の初期政策に関する調査を行った。特に地方印刷物についての調査を行なっている。これまでの調査では、金属活字による近代的印刷は、明治5年前後を境に地方へ広まっており、各地でも新聞、書籍といった出版物が洋紙へ印刷されるようになった。このような早い時期に技術が広まったのは、政府の産業政策だけではなく、民間による産業創出があったことも見逃せない点がある。こうしたことによって近代印刷への転換は、多くの人々に文字への知識欲と教育の普及を早めるきっかけとなっていった。これらの実証的な研究のために、新聞を中心とした資料から新聞用紙生産の実態を明らかにしてきた。又、地方新聞についての読者層及び印刷物に対する政策についての調査を行い印刷物の総量が非常に大きかったことを示してきた。これらについては、各種の論文によって明らかにしてきた。しかし、実際の史料において民意を判断することは、史料の実態から考えて非常に難しい。そこで、これまでの研究をより発展させて、ここでは新たに当時の庶民の実態をモノ(資料)から検討してみようというのがここでの研究基軸である。これまでのモノは、伝統的技術に裏打ちされたもので、経験による知識が重視されたが、近代的技術導入によって、これまでのハンドメイドのモノから製品としての欧米を基準とした工業規格に変えざる得ない状況に置かれてしまった。そのため、これまでにない高度で複雑な技術と科学的な高い知識が必要とされるようになった。しかし、このような明治維新から間もない時代に急速な工業化が進んだのは、これまでの経験的「モノ」の中に西欧にはない技術や、知識が備わっていたと考えられる。そこでこれまでのような史料研究ではなく、「モノ」としての印刷物を検討することが必要であると考えている。これまでの民具への検討や記銘民具といった研究ではなく、情報としてのモノを媒介して庶民の経験的な「知」に及ぼした影響についても検討を行った。そこで、江戸時代に人気があり、明治以降も消長の憂き目にあいながらも、スポーツして復活した相撲について各地の文献を調査した。相撲番付は江戸期における印刷物として重要なファクターとなるもので、番付の影響は各方面に及び、多くの商品や職業、和歌などが番付され、印刷され、番付額としても社寺に掲げられた。特に相撲番付の歴史は古く、印刷物としても非常に古い類例が残されている。それに対して社寺に掲げられた番付額は、江戸後期のものしか残されておらず、古いものは基本的には絵画が中心で、文字はほとんど書かれていないのが現状である。こうしたことから印刷物の影響を少なからず受けたと考えられる番付額が作成されている。その他にもこれらに関連して印刷資料(文書)についても、貴重な資料が多いと考えられるため、計測などを行い、保存状態についても調査している。
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