イスタンブルのアヤソフィア・ワクフの事例をもとにイスラム宗教寄進制度(=ワクフ制度)の歴史的展開を追う本研究の3年度(最終年)にあたる平成18年度には、次の研究を行った。 1.史料調査-ドイツ・ベルリン国立図書館における史料調査を、2007年12月〜2008年1月に実施した。ベルリンにおいては、ワクフに関するファトワー集と、19世紀の研究図書の調査をおこない成果をえた。とくに、16世紀のシェイヒュルイスラームであった、エブースード・エフェンディのファトワーについての調査から、ワクフ制度に関する法体系の変化を実証することに成功した。 2.1496年付けアヤソフィア・ワクフ調査台帳の校訂作業-総理府オスマン文書館MaliyedenMudevver No.19に整理された「1496年付けアヤソフィア・ワクフ調査台帳」の校訂作業を継続し、ほぼ完成した。本史料は、ワクフ制度を活用したイスタンブル再建プロセスの、もっとも重要な史料となる。インデックス作成など、刊行の準備をすすめた。 3.本研究の成果をトルコ語での論考、Fatih Vakfiyeleri'nin Tanzim Sureci Uzerineにまとめ、トルコ共和国歴史協会の雑誌Belletenに投稿した。この論文は、アヤソフィア・ワクフの創立を含むメフメト2世のワクフ寄進の経緯をイスタンブル復興史と関連づけて、明らかにしたもの。Belleten誌は、トルコにおける最も定評のある歴史分野の雑誌のひとつである。査読の結果、採択され、2008年4月刊行の263号に刊行予定(印刷中)。
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