研究概要 |
本年度は,主にラージャスターン、グジャラートの刻文収集・整理に費やした。 ・申請者がこれまで収集してきたデータ・ファイルや,新たに今年度東京出張やインドで確認した刻文史料から、前回科研費では対象外とされていた10-12世紀の刻文データ(Type, Date,発見地,所蔵場所,使用言語,掲載学術雑誌,etc.)をデータファイル・ソフトに整理し始めた。 ・12月-1月にかけてラージャスターン各地に点在する当該期の寺院・城砦を訪ね,刻文はもちろん,寺院・城郭の構築物や安置されている彫像なども写真におさめてきた(約300枚)。撮影した刻文のうち,Visaldeo寺院(Vsalpur, Tonk district)のVS1231年とVS1244年の2本の刻文は,この地域のチャーハマーナ朝の支配を知る貴重な史料であるにもかかわらず,150年前にカニンガムによって刻字が書き写されただけで(拓本ではない),未だにテキスト化されていない。しかもその書写は今回の調査によって,一部誤っていることが判明した。申請者はこの刻文のテキスト化を行い,邦訳・英訳を作成した。現在公表先を模索中である。 ・本研究の一環として,古代から13世紀までの国制の変遷を国家統合様式の視角から整理して,申請者が研究分担者として参加している『近代世界システム以前の諸地域システムと広域ネットワーク』(桃木至朗代表、平成16-19年度基盤研究(B)(2),研究費1,911万円)の研究会において、「インド中世形成期の国家統合:政治的秩序構築の様式」と題して報告した。
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