研究概要 |
本年度は、主にラージャスターンの刻文収集・整理、および南アジアの王権と国制に関する論考の作成に費やした。その内容は以下の通りである。 ・1-2月にラージャスターン東南部に点在する10-15世紀建造の寺院・城砦を訪ね、刻文を中心に遺構の写真・ビデオの撮影を行った。NanaではVS 1290年のきわめて重要な刻文を見つけることができなかったのは残念であるが、VS 1314年の未刊行の刻文の保存状態がよく、その撮影に成功したのは収穫である。また、Dhorではチャーハマーナ朝の統治システムを探る上で重要な3刻文を撮影したが、その唯一の刊行テキスト(by R.C. Agrawal,ヒンディー語学術誌Varadaに掲載)が多くの部分で誤りがあることが判明した。拓本よりもビデオの方が読みやすいという好例である。近くこれらの調査結果を公表したい。 ・昨年度大阪大学の研究会で報告したものを再考し、古代からムガル時代までの南アジアの王権と国制の展開を論文にまとめ、「南アジア史に見る帝国秩序と王権的分節」と題して科研費補助金成果報告書『近代世界システム以前の諸地域システムと広域ネットワーク』(桃木至朗代表、平成16-18年度基盤研究(B)、2007年3月)に掲載した。これは南アジアの王権と社会の基本構造とその歴史的展開を探ったものであり、本研究の骨格をなす論文でもある。 ・科研費基盤研究(C)成果報告書『刻文史料よりみたデリー・サルタナット期北インドの在地社会』(三田昌彦代表、平成13〜16年度)には若干不備があったが、それを補って増補版を作成し、関係研究者に配布した。
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