研究概要 |
本研究は4年計画であるが、本年度は、初年度であるため、まず、先行研究および入手ずみの資・史料を整理・分析した。これらの作業の成果を取りまとめて、その一部を、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所において開催された国際シンポジウム「中国系移民の選択的アイデンティティ」(7月29日)において、「スペイン領フィリピンにおける中国人社会の変容」と題して報告を行った。さらに、9月7日に、京都大学東南アジア研究所で開催されたセミナー「東南アジアを超えて--華僑・華人研究のフロンティア」においては、「"Sangley,""Mestizo"および"Indio"のあいだ--スペイン領フィリピンにおける"Chinese"を考える」と題する報告を行った。これらの報告においては、とくに、スペイン領フィリピン社会の変動期を特色づける中国系メスティーソの植民地社会における析出の契機を、スペイン植民地統治政策と中国人移民との関係、および現地社会との関わりの側面から検討した。 また、9月17日-10月1日には、フィリピン国立文書館およびマニラ大司教座文書館などにおいて、史料調査を行い、「マニラ公正証書原簿」の一部、および関連する手稿文書史料等を、主として電子複写により収集した。さらに、2006年3月5-18日の日程で、上記の文書館等で引き続き「マニラ公正証書原簿」等の調査・収集の作業を行った。これらにより入手した史・資料について、現在、収集文書の整理および読解・分析、また、必要に応じて、その内容をパソコンに入力する作業を行っている。 来年度以降も、収集資料の整理・読解、分析作業を継続するとともに、現地での「マニラ公正証書原簿」を中心とした史・資料調査・収集作業を継続し、スペイン領フィリピン社会の変動期の諸相を解明するべく作業を継続する予定である。
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