17年度の研究調査は主に二つの方向で行っていた。 (1)は、日本国内の文書資料の調査と整理である。すなわち東京大学東洋文化研究所所蔵仁井田陞文庫北京生活用水売買文書の調査、抄録、文字解読、コンピュータ入力、契約文書内容の注釈、伝統的文献学およびアーカイブズ学の方法にしたがって文字の識別、解読、考証、注釈を行ない、文書全体をまとめて出版する方向へ作業を行なった。 (2)は、2005年8月1日-8月20日、2006年2月28日-3月20日(予定)にわたって北京市での文献資料・研究情報の収集と現地調査を行なった。調査は、主に二つの内容がある。 (A):北京市档案館、首都図書館、第一歴史档案館、中国社会科学院近代史研究所図書館、中国国家図書館、北京市水道局博物館、北京市社会科学院図書館等の公機関所蔵の北京ライフラインに関する公私文書、文献を収集し、東京大学東洋文化研究所所蔵契約文書と関連しながら、水売買契約文書の価値、水売買文書が語った都市生活用水売買の権利構造と市場秩序、特に水源、生活用水の購入者と水道路の成立過程等を研究し、一つの成果として「18-20世紀における北京の飲料水問題--二つの『水道』を中心として--」という論文をまとめた(大阪市立大学編『水の都市文化』、2006年3月出版予定)。 (B):東京大学所蔵契約文書及び公私関連文献と突き合わせ、北京市に対する現地調査を行なう。これは旧北京の市街=胡同と井戸、水源、近代的水道およびごみ処理場の現地調査を含め、調査を行なう。17年度では、東京大学所蔵文書に関わった地域、特に最近旧建築の改造と都市開発の区域とされた旧正陽門周辺地域の胡同と市街に関して調査を実施した。
|