研究概要 |
本研究の目的は、「福音主義」と「アソシエーション」をキー概念としてイギリス名誉革命体制の統治構造の再編過程を考察することにあり、とりわけ社会政策の問題に焦点を絞って分析を行うものである。平成17年度は、研究全体のフレームワークを構築することを主眼とした。まず先行研究を踏まえながら、それを名誉革命体制の統治構造の再編の中に位置付けるため、近年の研究のなかでも代表的な作品であるRichard R.Follett, Evangelicalism, Penal Theory and the Politics of Criminal Law Reform in England, 1808-30(London,2001)など基礎的文献の精読と分析を行い、とりわけ研究動向のサーヴェイに力を入れた。それと平行して史料調査の準備をすすめた。夏休みを利用して、ウィルバフォースに関係する福音主義者たちの著作や記録、政治パンフレットや評論雑誌など未刊行の書簡や原稿を含む一次史料の収集のためにイギリスに調査旅行を行った。その後、これら文献整理段階で得られた知識ならびに史料調査を通じて得られた情報に関する分析を行った。まず福音主義者の博愛主義的活動に関する主張・内容を、18世紀後半から19世紀初頭のイングランドにおける社会思想の系譜に位置付け、また書簡や回想録などの整理・分析によって、福音主義者がどのような動機や背景から博愛主義活動に関わるようになったのかを検討し、最後に、福音主義者の博愛主義的運動を促した背景として、18世紀末以降のイギリス政治社会の特質についての分析を行った。
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