研究概要 |
本研究の目的は、福音主義とアソシエーションをキー概念としてイギリス名誉革命体制の統治構造の再編過程を考察することである.福音主義者は、1780年代以降、日曜学校運動,奴隷貿易廃止運動などの団体を設立することによって中央と地方の関係を再編していった。とりわけ,サポレオン戦争期に設立された「貧民の状態改善協会」は,福祉に関わる総合的情報収集団体としての活動を精力的に行った.本研究は,この協会に焦点を当て、ナポレオン戦争期の統治構造の再編過程を分析しようと試みるものである。また2007年は、奴隷貿易廃止200周年であり、福音主義者の活動が脚光を浴び再評価されているが、そうした顕彰史的アプローチとは異なる本研究のような学術的研究が今こそ求められているといえよう。本年度は,前年より引き続き,この団体に関する史料の収集と分析に取り組んだ。2007年7月には、10日間ほど英国に滞在,ロンドンを中心とする史料調査を行った。その成果の一部は、2007年度西洋史学会の大会シンポジウム「市民社会と社会問題:18-19世紀ヨーロッパの政治,経済,社会」において「イギリス自由主義の社会的基盤:貧明の状態改善協会の統治構想」と題する報告を行い、そこでの討論からも刺激を受けることになった。また8月には,小樽商科大学主催のシンポジウム「北海道と国内植民地」でも「イギリス帝国史研究の新潮流」と題する報告を行った。
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