研究課題
基盤研究(C)
メロヴィング国家組織の頂点に君臨する国王の本質的性格は、「役人」としてのそれであった。国王文書の形式や、超越的な支配者のオーラを演出する葬送儀礼の不在などの要素を考えると、役人王権なる表現が妥当かどうかは別にして、自己表出工ネルギーの希薄な王権との印象は拭えないないのである。分王国体制は、地理的、文化的に多様な格差をもつ広大な空間を、無理矢理ひとつの政治統合組織として纏め上げるという、客観的に見てこの時代のフランク人には到底なし得ない課題を背負い込むことから、彼らを解放してやることができた。この三分国体制が統治の適切、かつ相対的に統合可能な空間を構成し、またひとつの分王国内部で生じた軋轢や政治的、党派的対立が、メロヴィング国家の全体的瓦解を防止するシステムとして機能したのである。メロヴィング王権が自己表出の希薄な性格であればあるだけ、王であることの根拠の客観的重要性が増大する。それはメロヴィングの血筋、すなわち血統であった。6世紀半ばまでの異国の主族との族外婚、6世紀半からのフランク王国内の最下層の、事実上家柄をもたない女性との内縁関係による後継者の獲得という婚姻政策の転換は、まことに鮮やかという他はない。ところで残る二つの特徴、すなわち分節的徴税システムおよび国王宮廷と地方支配の結合は、部分的に重なり合った現象であると言える。統治は7世紀まで基本的に文書作成を必要不可欠な手段としていた。主要な司教座都市で司教が世俗の領域をも掌握する体制があらわになるのと平行して、識字能力をもったほとんど唯一の俗人である宮廷役人を、チャンスがあれば地方教会に送り込んだ。つまりこの国家は依然として文書の作成と管理を根底においた国家運営を規範としていたのである。宮廷役人から司教への転身は、教会体制の国家への浸透ではなく、むしろ教会組織の世俗権力による利用という面があったのである。
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