研究課題
先住民グァマン・ポマ(1550?-1616)が独学で習得した征服者の文字言語(スペイン語)を駆使して著した浩瀚かつ貴重なクロニカ(記録文書)『新しい記録と良き統治』Nueva Cronica y Buen Gobiernoには、キリスト教文化を取り込んで自己主張する被征服者の巧妙な生存戦略がいくつか認められる。今回の研究では、スペイン王室の進める植民政策を厳しく批判し、先住民インディオに対するスペイン国王の賠償義務を論じたラス・カサス(1484-1566)の思想を、グァマン・ポマが継承し、発展させたことを解明し、その歴史的な意味を考察した。その研究成果は第52回国際アメリカニスト会議(2006年7月スペイン・セビーリャ大学)の歴史部会および、大阪外国語大学グローバルダイアログ研究会主催の国際シンポジウム「トラウマの社会史-民衆のトラウマと歴史参加-」(2006年12月)で基調講演として報告発表した。また、前年度の海外調査で収集したワマンガ市における土地訴訟関係の文書やグァマン・ポマが関わった土地返還訴訟に関わる文書(プラド・テリョ文書)をもとに、グァマン・ポマのような先住民支配者層にとり、スペイン語を話すだけでなく、「文字」を用いて意思の伝達を図るのがスペイン支配下で伝統的な権威を維持するのに必要不可欠な要素であったことを解明した。その成果は、ペルー・カトリック大学が2006年度に新設した「アンデス研究プログラム」(大学院修士・博士課程)の国際学術委員会委員および客員教授として、同プログラムの開講記念講演会で発表した(2006年8月)。現在、2006年度の海外調査で収集した「聖職者弾劾文書」や「土地訴訟関係文書」をもとに、クロニカを著す以前のグァマン・ポマの経歴に注目し、先住民支配者(クラーカ)としてのグァマン・ポマの行動と作品執筆の関係を解明することに従事し、その成果は2007年4月、サンチアゴ市(チリ)で開催される第4回ペルー研究者国際会議(International Congress of Peruanists in Foreign Countries)で発表予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件)
世界の食文化 13 中南米(山本紀夫編)(農文協) 第13巻第2章1
ページ: 46-59
「正しい戦争」という思想(山内進編)(勁草書房) 第2章
ページ: 75-107
Memorias de JALLA 2004 de Lima.Universidad Nacional Mayor de San Marcos. Lima, Peru. Tomo III
ページ: 1895-1901