平成18年度は、1930年代にモスクワ住宅協同組合が行った各種の「文化活動」(メーデーや革命記念等の祝祭行事、住宅レベルでの託児所、幼稚園、ランドリー、食堂の設置と運営等)に関わって、昨年度から積み残された資料調査を、モスクワの「科学アカデミー図書館」で行った。特に、本研究課題の柱である「自主運営食堂」事業に関する貴重な資料を雑誌『公共給食』(1939年11月号)の中に新たに発見し、この事業に関する全貌をほぼ解明することができた。また、住宅協同組合を含む住宅組織に関する補足的な資料調査・収集をモスクワの国立図書館(旧レーニン図書館)でも実施し、この分野に関する資料収集作業を概ね完了させることができた。 以上に触れた成果を昨年度来の研究成果に加えることで、本年度は、研究期間の最終年度として、研究全体の取りまとめ作業を並行して行った。その成果の一部として、「スターリン体制下の公共性とジェンダー-モスクワ住宅協同組合の「文化活動」を手がかりに」と題した論文を公刊した(『思想』987号、2006年7月)。また、「モスクワ住宅管理制度の変遷:1917〜1937」と題した研究会報告を行った(ソ連東欧史研究会:2006年6月24日)。さらに、自主運営食堂事業に関する英語論文("Stalinist Public or Communitarian Project?: Housing Organizations and Self-managed Canteens in Moscow's Frunze Raion)の執筆を終え、英文校閲も終了したので、イギリスの専門雑誌(Europe-Asia Studies)に投稿する。
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