この研究課題の目的は、「最高存在」(Etre supreme)という概念が18世紀の思想風土にあって何を意味したのかを検討するとともに、1794年6月8日に開催された最高存在の祭典がそこに参加した人びと、とくに民衆層によってどう受けとめられたのかを、この祭典にかんする当時の「世論」を検証することによって明らかにしようとするものであった。この課題を遂行するため、平成19年度も夏期休暇などを利用して渡仏し、国立古文書館、パリ警視庁史料館、パリ市歴史図書館、フランス国立図書館などに所蔵されている史料の調査と蒐集をおこなった。これらの史料蒐集の成果をも背景に、平成19年度には「リヨンの革命と『サン=キュロット』-小井高志『リヨンのフランス革命』によせて-」(『史学雑誌』116-6)と「フランス革命史研究の変貌」(『歴史と地理』606)を公にした。また、「最高存在」という概念が18世紀の思想風土において何を意味したかという課題にかかわる研究成果は、暫定的なものにとどまるが、平成20年度に刊行される「研究成果報告書」にまとめられる予定である。たほう、最高存在の祭典がそこに参加した人びと、とくに民衆層によってどう受けとめられたのかという課題に関しては、学術論文として公刊できるまでの成果が現在までのところ得られていない。これについては今後の継続的な調査・研究の終了をまって、できるだけ近い将来に著書というかたちでその成果を公表したいと考えている。
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