研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、19世紀前半のアイルランド農村における貧困と世紀半ばの大飢饉を分析し、これらの現象とヨーロッパの近代社会との間の構造的関連性を再検討することにあった。本研究が明らかにしたことは以下のことである。第一に、19世紀のアイルランド農村では脱工業化(副業の喪失)が進行し、18世紀の農村世帯が蓄積していた、危機に対応するための余剰が失われた。第二に、この貧困の進行に際して公的救貧システムが導入されるが、これは理論上完全雇用が可能な社会に対応するための制度であり、大規模な失業が構造化されていたアイルランド社会の貧困に対応できるものではなかった。そして大飢饉の際に自由党政府は、公共事業および食糧供与を廃止して、この制度を救恤の基本としてしまった。第三に、19世紀前半に凶作が数度発生していたが、政府は公共事業や現金供与によって対応して飢饉を小規模なものにとどめていた。以上要するに、19世紀前半のアイルランド農村社会は構造的な不安定要因(貧困)を抱えており、また大飢饉をもたらした凶作は予見可能であり、少なくとも部分的には対応可能であったはずなのである。本研究課題を終えたことで、今後は日本でほぼ手つかずの領域であるアイルランド大飢饉を本格的に分析するための足がかりが築かれたと信じている。
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大阪産業大学経済論集 9巻2号
ページ: 35-68
Osaka Sangyo University Journal of Ecomoics vol.9, no.2
大阪産業大学経済論集 8巻2号
ページ: 1-29
大阪産業大学経済論集 9巻1号
ページ: 9-36
大阪産業大学経済論集 21巻1号
ページ: 33-48
Osaka Sangyo University, Journal of Ecomomics vol.8, no.2
Osaka Sangyo University, Journal of Ecomomics vol.9, no.1
The Osaka Gakuin Review of Economics vol.21, no.1
(forthcoming)