研究概要 |
本研究は,古墳出土武器・武具の検討をつうじて古墳時代中期の軍事的動向を解明するための基礎的研究である。具体的には,中期型甲冑のなかでもっとも出土数の多い横矧板鋲留短甲の同工品を可能な限り抽出すること,また,その分析過程をつうじて,甲冑の生産と供給にアプローチするための基礎的な方法や視点を獲得することを研究の目的とした。こうした目的を達成するために,本年度は以下の資料について調査を実施した。 1.滋賀県供養塚古墳,同黒田長山古墳出土短甲/2.岡山県正崎2号墳,同高屋出土短甲/3.愛媛県後谷古墳出土短甲/4.埼玉県生野山古墳群出土短甲/5.大阪府黒姫山古墳出土甲冑/6.福岡県真浄寺2号墳,同小田茶臼塚古墳出土短甲/7.佐賀県一の谷古墳出土短甲/8,茨城県三昧塚古墳出土短甲/9.群馬県中原古墳出土短甲/10.奈良県池殿奥5号墳,同後出古墳群,同新沢千塚古墳群出土短甲/11.東京国立博物館所蔵短甲/12.埼玉県東耕地3号墳出土短甲/13.大阪府野中古墳出土短甲 本年度は最終年度にあたるため,以上の調査成果を加えたこれまでの収集データを整理し,研究のとりまとめに努めた。その結果,横矧板鋲留短甲には三角板鋲留短甲の流れをくむ技術系統とその量産段階にあらたに成立した技術系統の二者が存在することが明らかとなり,また,そうした認識のもとに抽出しうる同工品の存在を把握するにいたった。一連の研究成果は「甲冑同工品序説」と題する論文にまとめ,研究成果報告書のなかに掲載した。
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