目的(1)既存の発掘資料であり、細石刃石器群の比較研究を行なううえで極めて重要な資料でありながら、未報告のままとなっている資料について、基礎的な整理作業、記載作業と図化作業を実施し、その成果を報告する。 3年間の研究期間で、およそ16万点(159893点)の石製遺物の整理を進め、注記、全遺物の位置データのコンピュータ入力、分類など本研究の第1目的である報告書作成のための基礎的整理を終了した。さらに、遺物位置データを操作して39に及ぶ遺物集中地点とそれぞれの遺物組成の把握を完了し、それらを説明するために必要な石器1200点を抽出して実測図作成とトレース化とその個別記載、組成別・遺物集中地点ごとの分布図の作成も同時に完了した。その結果、ここに発掘報告書として学界に報告する準備を終了した。 目的(2)細石刃石器群における細石刃の剥離方法の同定、ならびにその使用方法の推定の実施。 細石刃の剥離方法の同定については、研究代表者が設計した「油圧式剥片剥離機」を試作し、実験を重ねた結果、本研究で対象とした遺物群にある3型式の細石刃技術のうち、2型式の剥片剥離を再現することができ、その加圧力を数値で捉えることに成功した。現在は残る1技術型式の再現を続行中である。細石刃の使用方法の推定については、26000点余の細石刃の顕微鏡観察を継続中である。既に同遺物の長さ・幅・厚さの3形質の計測は98%を終了しており、今後は観察結果と併せた総合的検討に進む計画である。
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