本研究は、国分寺の創建期に的をしぼり、寺院地内の諸施設の整備やその空間構成、造営に対する組織・労働編成の方法、さらには、各国の国分寺造営に対する認識がどのようなものであったのかを具体的に検討する。そこから、各国分寺の独自性や共通性をひきだすことによって、律令制という政治理念のもとで、各国が長い間に培ってきた風土や歴史的条件を考古学的に読みとり、それを古代仏教全体の中に位置づけることで、東アジア世界の中での日本の仏教の特質を解明することを目的とする。 今年度は、3ヶ年計画の初年のため、遺構・遺物の修正を中心に作業を行った。遺構では、塔・金堂・講堂・僧坊・回廊・中門・南門などの主要建物を建物ごとに規模・構造が比較できるよう同一縮尺での集成を行った。個別の国分寺での分析はあるが、全国規模での集成は未だできていないというのが国分寺研究の現状だからである。 建物では、出土瓦の研究を中心に行った。特に、造営に対する組織や労働編成の方法は、畿内的方法を導入した国分寺、多賀城など国分寺造営以前の造営方法を模倣した国、さらに、在地における氏寺での方法を拡大した国など、各国ともきわめて多様である。国分寺研究の多くは、そうした多様性を生んだ各国の社会的・歴史的条件などをいかに読み解くかであり、瓦を中心とした分析は、さらに進めていきたい。
|