平成17年度はまず既刊の報告書の分析に力を注いだ。特に風納洞土城・〓沙里遺跡・艇止山遺跡の資料は膨大で、これまで収集した百済集落関係の写真資料整理まで行なったため、予想以上に時間と経費がかかり、他の作業を若干縮小することとなった。しかし、この分析作業の結果、〓沙里遺跡では原三国時代だけでなく、百済時代の方形区画溝を確認し、百済時代の小地域首長層居宅の実体をとらえることができた。その成果は、平成18年度上半期に論文として公表する予定である。 韓国での資料調査は3回を予定していたが、上記の理由で2回とした。しかも、平成17年度は全羅道地域で河南地区遺跡群など、重要な発掘が目白押しだったため、忠清道地域の本格的調査は平成18年度にゆずり、全羅道地域と京畿道地域を主体とした。風納土城の出土資料調査によって、漢城時代の王都の一角に、鉄斧鋳造工房をはじめさまざまな生産工房が存在した事実を確認でたのは、大きな収穫であった。また、河南地区遺跡群も小地域首長層居宅の一角と考えられ、こうした中間層の把握が、今回の研究の大きなポイントとなる。 発表論文のうち1本は、研究の基礎となる土器編片年と暦年代を、日本の編年との併行関係によって、今一度確認したものである。もう1本は、全羅道の栄山江流域の様相把握を試みたものである。
|