平成18年度は、平成17年度に行った相模国の古代寺院瓦や瓦窯跡と推定している横須賀市乗越瓦窯跡採集瓦を対象として、Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Ti(チタン)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、As(ヒ素)、Rb(ルビジウム)、Sr(ストロンチウム)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)による13種の元素を蛍光X線で検出された結果と肉眼観察に基づく石井瓦窯系、法塔瓦窯系、下寺尾型、公郷瓦窯系、瓦尾根瓦窯系、南多摩瓦窯系、からさわ瓦窯系の分析とを比較検討し、報告をまとめることにした。とくに18年度は、13元素のうち、亜鉛・ヒ素を除いた11元素に基づく主成分の分析を行い、その分布域の検討を進め、さらにアルミニウムとルビジウムの強度比による判別ないしはカリウムとケイ素による判別のデータ化を進めていくなかで、下寺尾型と法塔瓦窯系の分布域が重複し、石井瓦窯系、乗越瓦窯系、公郷瓦窯系、からさわ瓦窯系は明確に独立した分布域を構成するものであることが明らかになった。また瓦尾根瓦窯系と南多摩瓦窯系の分布域も明らかに異なる構成であることが判明した。しかし、瓦尾根瓦窯系と同様の製作技法をとって類似した胎土をもつ生産瓦窯不明の資料については、特定の分布域を示す傾向は認められなかった。
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