研究概要 |
1990年以降,東京都ならびにその周辺での在留インド人の顕著な増加がみられた。在留インド人の増加は,1990年代半ばから進展したIT革命に関連した技術者需要の増加と深く関わっているといえる。また近年では家族滞在の数も増加し,女性ならびに子どもの数が増えている。 東京都のインド人は,特に江戸川区で増加が著しく,集住地区(西葛西)が形成されている。インド人コミュニティは,これまで母語(出身州)や宗教(ジャイナ教など)ごとに成立していたが,近年ではインターネットを通じて,ナショナリティに基盤を置くコミュニティや居住地域(江戸川区)を単位とするコミュニティが成立するようになっている。子どもの増加に従い,2004年に初めてのインド人学校(江東区)が設置され,06年には江戸川区に設立された。さらに08年に横浜市に設立される予定である。これらの学校は,インド中央政府の学校教育基準に則したものであり,IT技術者の子どもがインドの私立学校やアメリカの学校にもスムーズに編入できる基準を満たしている。これがIT技術者のグローバルな流動性を担保する重要な条件となっている。また,インドの私立学校と同様英語が公用語であり,各母語での教育は行わない。本国から離れた地でインド国民としてのナショナル・アイデンティティの養成装置としての機能が着目される。 横浜市によるインド人学校の誘致は,インドの資本(IT企業)を横浜市に誘致する基盤整備のため行われ,外資獲得をめぐる都市間競争における横浜市の都市戦略の一環である。またこれらの経済のグローバル化はインド本国の地域(バンガロール近郊)にも大きな影響を与えている。
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