本研究の目的は、空洞化が目立つ中心市街地の活性化という政策課題をふまえ、地域経済の再編や都市計画の見直しを視野に入れつつ、多様化する消費者購買行動や変容著しい地域商業環境を正確に把握するとともに、GIS(地理情報システム)を用いた商業立地分析や商圏モデルの構築をおこなうことにある。平成17年度における研究実績は以下のとおりである。 1.近年の地域経済環境の変化やその研究動向について理解を深めるため、関連図書や文献資料の収集を積極的に進めた。大店法廃止など市場メカニズムを重視した規制緩和は、資本による自由な競争を促進したが、その弊害が目立つにつれ適正な立地管理が模索されるようになった。地方行財政の再編、産業構造の変化、所得の格差拡大など、構造改革政策が地域経済にもたらした影響は広範囲にわたるため、本研究が準拠すべき分析枠組みについて検討をおこなった。 2.統計情報や関連資料の収集をおこなうとともに、GISを用いた地域分析手法について検討を加えた。また、徳島県の消費者行動調査データを分析するための基礎地域単位となる小学校区について、各市町村への照会をもとに独自のデジタル化作業をおこなった。また、1万世帯の非集計データを用いて分析を進めた結果、徳島都市圏から京阪神方面への消費流出は従来言われてきた若年層よりむしろ壮年層で大きいことが示された。 3.消費者の空間行動分析について、道路ネットワークや時間制約を組み込んだモデルを提案し、都市内部におけるアクセシビリティの空間的な分布を地図化するため、試行的ケースをもとにデータ操作の可能性を検証した。その成果はIGUのコミッションおよび韓国GIS学会で報告した。
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