本研究の目的は、中心市街地の活性化や持続可能なまちづくりという政策課題をふまえ、地域経済の再編や都市計画の見直しを視野に入れつつ、多様化する消費者購買行動や変容著しい地域商業環境を正確に把握するとともに、GIS(地理情報システム)を用いた商業立地分析や消費者行動分析をおこなうことにある。 1998年4月の本四架橋神戸・鳴門ルート全面開通にともない、徳島県の商業環境は激変し、京阪神方面への消費流出(いわゆるストロー現象)が顕著になった。商業統計を用いて推計をおこなったところ、所得水準の差を考慮した場合でも、徳島県の人口あたり小売業年間販売額は8万円以上少なく、地方圏31県中で最大の流出額となった。こうした消費流出は若年層を中心に買回品でより大きくなっている。 徳島県では狭阻な市場規模や割高な輸送費用のため、大規模商業施設の進出が遅れていたが、自動車を利用した購買行動の一般化にともない、最近10年間に地価の安い郊外の幹線道路沿いへの立地展開が進んだ。都市計画規制の緩やかな非線引き白地地域への享地も目立つ。一方、中心部では大型店の撤退閉店商店街の空洞化が続いている。新まちづくり三法による大型店の立地規制強化は、中心市街地活性化と政策的整合性をとる意味で評価できよう。 購買行動アンケート調査の結果から、日常の買物行動では80%前後が自動車を利用している点に地方圏の特色がうかがえる。こうした交通手段や生活様式が移動の距離抵抗を小さくし、商圏の拡大や競合を生んでいる。また、パーソントリップ調査を用いた分析からは、勤務先からの帰宅途中における買物のため、大幅な迂回行動が多く見られることがわかった。大型店の立地再編など地域商業環境の変化は、今後こうした流動パターンに影響を及ぼすものと考えられる。
|