1.主に以下の三ヶ所で資料の調査と収集を行った。 (1)北九州市に関して、1900〜1920年代にかけての地域政治の動向について行政資料および新聞資料の検索、複写を行った。市文書館に保存されている旧五市の市会および市参事会の議事録のうち、門司市については対象時期のすべて、小倉市と戸畑市については昭和初期を中心に資料収集を行った。その結果、昭和初期の生活費軽減運動に関して、これまで不明であった市会や行政の動向、各市会議員の言動がある程度明らかとなった。また地域政治については、市会、県会、衆議院の各選挙時におけるさまざまな政治団体の活動と支持者の変動、有権者以外の民衆の動向などを新聞資料の検討から明らかにした。 (2)山口県立図書館において、昨年度から継続している新聞資料の収集を実施した。特に各種選挙における地域団体の動向や町総代会の動きなどを中心に資料を収集した。その結果、下関市において選挙時に町総代会など地域有力者集団が候補者の選定に強い指導力を発揮することで、地域秩序を維持し、都市政治を支配していたことが明らかとなった。 (3)国立国会図書館(『松本学文書』および『平岡浩太郎文書』)、国立公文書館、東京市政資料室において調査を実施し、福岡県当局による労働調査や失業問題への対応の資料を収集した。 2.北九州市における都市問題、都市計画、社会運動の歴史について概説書の執筆を行った。 3.都市研究と欧米の文化・社会地理学の動向について、D.ハーヴェイの都市研究と空間論の検討を行った。その結果、都市空間の変動、階級とコミュニティ、空間表象の生産が都市民衆運動の分析において重要な論点になっていることが明らかとなった。
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