研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、1910〜40年代の地方都市における地域住民組織の存立形態および再編成と、その組織を基盤とした民衆運動の特徴を明らかにすることにある。主なフィールドは福岡県の主要都市であるが、比較研究のため下関市と仙台市でも調査を実施した。得られた知見は以下の通りである。(1)1910年代初に、全国的に米価騰貴問題が発生した際に、既存の地域住民組織がその一時的救済に大きな役割を果した。またいくつかの都市では各種議員の選出に際して、住民組織が中心となって「予選」を実施しており、これらの点から、当該期では地域住民組織が社会秩序の維持において中心的役割を果したことが明らかとなった。(2)1920年代半に、地域住民組織をめぐって行政、政党・政派、住民の間で矛盾と葛藤が高まり、その再編成が生じた。その背景には、都市化に伴う住民の社会階層の変化、普選による民衆の政治参加の拡大、社会の不安定化への対策として行政による「都市共同体」の創出、といった複数の要因があったことが明らかになった。(3)この再編成によって生まれた地域住民組織が民衆運動の基盤となったことが明らかになった。特に、門司市が中心となった昭和初期の電灯・電車料金の値下げ運動において、市会議員や既成・無産政党と並んで、町総代を核とした地域住民が運動の担い手どなり、地域独占事業への批判を展開したことが明らかとなった。(4)1940年、地域住民組織は国家によって再構築されるが、本研究からも明らかなように、この組織を行政の末端組織としてのみ理解することは不十分である。本研究は、近代化と都市化という現象を、民衆の視点と経験、行動様式から明らかにした。これは歴史地理的事実の解明にとどまらず、都市住民を主体とした「公共性」および「共同性」のあり方を再考する上でも、多くの知見を提供するものである。
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