研究概要 |
本研究の目的は,総合商社を対象として日本企業のグローバル化とローカル化の相克をレギュラシオン理論の視座から解明することである。平成17年度においては,本研究を遂行するための基礎資料となる総合商社関係の業界誌2誌(バックナンバーを含む),有価証券報告書,レギュラシオン理論分野の書籍を購入し,分析を開始した。また大手商社各社から入手した社内資料,ホームページ公開の資料,業界誌資料のうち,従業員数や財務に関するデータを購入したノートパソコンに入力し,分析を行った。 次に,平成18年2月に大手商社5社の東京本社を訪問し,世界各地の業務活動を統括する部門の長に面会し,世界各地の現地法人や支店,駐在員事務所の組織とグローバルな業務統括体制,世界各地における地域戦略,APEC/NAFTA/EUなどの地域的経済組織への対応,進出先での従業員のローカル化の現状と課題などについて,聴き取り調査を行った。相手の都合により1社のみ聴き取り調査が延期になったため,平成18年度の早いうちに実施する予定である。また平成18年3月には英国・ロンドンに出向き,大手商社6社の欧州会社を訪問し,社長や業務担当部長に面会した。東京本社で聴き取った世界全体の事業展開状況を踏まえ,成熟市場であるためとりわけ事業展開が困難であるといわれている欧州における各社の現況を調査した。欧州はEU拡大にともない市場統合が進んでいると思われたが,商社の実際の業務からすると各国間の違いが少なくない。そうした困難な中にあっても統合のメリットを享受するため,各社とも欧州全域を一体とした組織運営を行っており,欧州全体の商品別責任者を配置することで効率化を図っていることが明らかになった。
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