本研究の1年目は、これまでの調査研究をふまえつつ、戦前の電気事業の底辺を支えたといえる地域で設立した町村営電気、地域あるいは集落単位で電気供給を行った電気利用組合の全容を明らかにするために資料調査を中心とした調査を行った。 前者については、膨大な資料の保存が確認されていた岐阜県旧宮村(現高山市)と長野県旧中沢村(現駒ヶ根市)の資料調査を行った。後者については、国立国会図書館に電気利用組合の実態をまとめた『電気利用組合に関する調査』(昭和4)が所蔵されていることが判明し、この資料を手懸かりとして資料調査を行った。 『電気利用組合に関する調査』によれば、電気利用組合が多く分布していた上位県は、愛知県(23)、岐阜県(13)、福岡県(11)、徳島県(10)、静岡県(10)、福井県(10)、岡山県(8)、大分県(6)、広島県(6)、富山県(5)であった。今年度は、これらの内、大分県と富山県を除く、各県の公立図書館、公立文書館において、資料収集を進めた。県レベルでの調査の結果、全般的に電気利用組合そのものが地域史の中で位置づけられていないケースが多く、県史レベルでは電気利用組合にふれるものがなく、市町村史のレベルにおいても、地域電化史の中で簡単に触れられているケースは多いものの、体系的に電気利用組合に触れられているケースは少ない。これは電気利用組合に関する資料の残存、保存状況と対応しているものと考えられ、電気利用組合の設立のプロセスとその意義を体系的に捉えることは、かなり困難に思えた。しかしながら、広島県旧戸河内町(現安芸太田町)の町史には、電気利用組合の設立過程、展開、意義を体系的に捉えることの出来る資料が豊富に収録され、実態がよくわかっていない電気利用組合の一端を明らかにすることが出来る見通しがついたことは大きな収穫であった。 2年目の平成18年度は、旧戸河内町の集中調査を実施する予定である。また予定されている海外の事例調査については、1997年に環境問題を重視した住民等の出資によって配電網を買収する組合を設立した南ドイツ・シェーナウ町の調査を年度末に実施すべく、準備を進めている。
|