研究概要 |
研究代表者は、助成期間である平成17年度と18年度の二年間にわたり、米国国立公文書館II号館(ならびに沖縄県公文書館)に収蔵されている琉球列島米国民政府(USCAR)文書を撮影・複写し、それらを分析することによって、戦後沖縄における米軍統治の実態と地方政治の形成過程を検討し、前者の後者への影響を考察した。収集した文書は、USCAR公安局、広報局、総務室、渉外局、そして厚生教育局の業務内容にわたり、総数ば1,300件以上にのぼった。これらの収集文書は、USCARが左翼政党・政治家・活動家に対する内偵、琉球政府各種選挙結果のモニター、Aサインやオフ・リミッツといった諸制度を用いた社会的コントロールの実態を記す貴重な歴史資料であった。とりわけ公安局文書は日本で未公開であり、この文書を用いることによって、これまで十分には知られていなかったUSCARによる沖縄地方政治・社会への関与やコントロールが明らかになり、研究代表者のこれまでの沖縄研究の成果を組み合わせることで、沖縄住民が米軍基地を止むを得ず受容し、米軍統治が安定化する過程を実証的に浮き彫りにした。研究成果報告書では、本研究における文書収集と文書内容を解説したあと、コザ市(現沖縄市)に対するUSCARの公衆衛生政策、復帰前のコザ市政の動態、ならびに同市における売春、人種問題、騒動といった社会的無秩序の展開を概説した。また巻末では、米国および沖縄県で研究代表者が収集したUSCAR文書の一覧を付録として収載した。この報告書は、研究代表者のホームページにもアップロードされ、広く一般に利用できるようになっている。
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