経営者個人の行動と企業の立地決定の関係を把握するため新たなアプローチを開発した。新しい研究フレームワークをテストするため、在日ドイツ人マネジャー58名に対する詳細なインタビューを行った。この結果、文化変容のパターンと立地選好との間に相関関係があることが明らかになった。分析から、日本における第一のグローバル都市と、第2のグローバル都市のビジネス環境では、成功できる国際的マネジャーのタイプが異なることが示された。文化変容が進んでいるマネジャーをハイブリッドマネジャーと定義した。ハイブリッドマネジャーは、典型的海外派遣マネジャーとは明らかに異なる。典型的海外派遣マネジャーの成功は人的資源の状況と多国籍企業間ネットワーク内の協力に大きく依存しているのに対し、ハイブリッドマネジャーは現地市場環境により積極的に関与し、情報ネットワークを築いている。 オンライン調査結果の分析の結果、海外派遣マネジャーとハイブリッドマネジャーを区別する決定要因は、a)日本語能力、b)協力的な日本人パートナー、c)日本子会社内での意思決定への関与、であることが分かった。さらに、立地による経営的行動を区別する決定要因は、a)企業成長、b)文化的経験、c)意思決定、であった。東京・横浜のマネジャーは市場拡大を目標とした企業成長目標を持つ傾向があるのに対し、大阪・神戸のマネジャーは経営の質的改善を重視しているが、それを実行するためには、文化的経験が重要な資質となる。 今後も、ドイツ企業の立地決定は東京・横浜へ向かう傾向が益々強まるであろう。第一のグローバル都市の「海外派遣マネジャーコミュニティ」のルックイン効果を克服し、大阪・神戸の立地優位の信頼を再構築するためには、ハイブリッドマネジャーの文化的知識をグローバルなつながりをつくるための社会資本を築くのに役立つハイブリッドコミュニティーに蓄積していくべきであろう。
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