研究概要 |
本年度は,過去2年間にわたる黒潮ルートに沿う根栽農耕文化研究の総括の年と位置づけた。前半は,それまでの研究成果を公表するとともに,引き続き研究協力者と連携しながら資料分析とディスカッションを行った。後半は,研究の総括に充てるとともに,若干の補遺調査を行った。 4月に公表した「台湾蘭嶼におけるタロイモ栽培」は.台湾島南部の離島,蘭嶼の先住民ヤミ(タオ)族の根栽農耕文化に関する過去2年間に及ぶ実地調査の成果をまとめたものである。これによって,ヤミ族の根栽農耕様式、特にタロイモ栽培の実態を明らかにし,彼等が根栽農耕の正統な継承者であることを明らかにした。そして,より詳細なタロイモ栽培様式の比較検討によって,ヤミ族のものは南西諸島型とオセアニア型の中間型として位置づけられることを論じた。 6月に公表した「西太平洋地域の文化領域と日本-南方の視点から-」日本の先史文化を広く西太平洋の諸文化圏の中に位置づけ,人種・言語・石器・土器・農耕などの角度から考察したものである。大きくは日本の基層的文化が,アジア大陸東部に連なる東西軸と北方文化・南方文化に連なる南北軸という二つの基軸に沿う諸文化の流入あるいは交流を通じて形成され,成熟してきたこと,特に農耕文化には南方的要素が強く認められることを論じた。10月に公表した「タロイモの栽培と伝播-日本・台湾・フィリピン-」は,台湾ヤミ族の根栽農耕の研究のさらなる展開を行うとともに,親縁関係にあるフィリピン最北部のバタン諸島のイヴァタン人の根栽農耕にも視野を広げて,根栽農耕文化伝播め黒潮ルートの解明に迫ろうとしたもめであり,本研究の深化に寄与するものである。 これらの研究成果を総括して,本研究の研究成果報告書としてまとめた。
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