本研究は、地方紙を資料として「慣習」が再構築される過程を記述・分析する。初年度である今年度は以下のように研究を進めた。 1.先行研究の閲読 まず、先行研究の渉猟と閲読・検討を行なった。地方の小資本による新聞・雑誌類が百出したのは新しい現象であり、これに関する人類学的研究の蓄積はほとんどなかったが、スハルト政権末期以降のメディアとメディア規制の変化についての先行研究の検討を行なった。 また、マス・メディアの人類学的研究は比較的新しく開拓された分野であるから、先行研究の検討をインドネシア研究や人類学に限定せず、メディア社会学、コミュニケーション論、内容分析、カルチュラル・スタディーズなどの研究業績を広く渉猟した。計量的分析の有効性を確認したが、計量的な内容分析に適切なのは、仮説検証的な研究である。本研究では民族誌的な質的研究を目指すこととした。 2.資料収集の準備 インドネシアのプレスに関する資料を収集した。また、web上に紙面を公開しているメディアを逐次閲覧、ダウンロードし、記事を整理することを計画したが、小さなメディアにおいてはweb siteをもたないか、あるいはほとんど更新されないために、資料としてあまり役に立たないことが分かった。大資本の地方紙についてはwebに公開された紙面を定期的に参照したが、対費用効果が著しく低く、時間や費用の制約からも、これを資料として扱うのではなく、主たる資料としては、次年度収集する印刷媒体について分析することとした。 3.短期の予備調査 バリ州に赴き、バリの地方紙を収集し、さらに地方紙を定期購読した。多数ある日刊紙、週刊誌を郵送させることも現実的ではないし、そもそも、ほとんどの地方の小メディアは海外への郵送をしていないため、これらは次年度に引き取ることにして現地に保管してある。また、地方紙のほとんどについては直接本社を訪れ、事前の情報収集を試みた。
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