本研究は、多民族国家ミャンマー(旧ビルマ)が、1948年の独立以降、どのような文化行政を実施し、その脈絡において、諸民族文化がどのように文化遺産として選別認定されてきたかについて、現地資料を活用して分析を試みることを主目的とする。本研究では、独立以前の英領植民地時代に、多数民族であるビルマ族に関する考古学資料を中心とする文化行政が実施され、間接統治下にあった非ビルマ系の少数民族文化がその管轄外にあったが、連邦制を採用した独立以降において、次第に文化行政の対象として位置づけられ、1990年代以降に入るとビルマ族中心の国民文化形成政策と相克していく過程に着目している。 本年度は、旅費の活用により、研究課題に関係する現地の研究機関に出向し、英領植民地時代のミャンマー(旧ビルマ)の文化行政と文化遺産に関する歴史資料の蒐集を行い、その蓄積を図ると共に、海外共同研究者等との情報交換を行った。具体的な訪問先は、ミャンマーの歴史委員会、大学歴史研究センター、SEAMEO-CHAT Regional Centre(東南アジア教育省組織歴史伝統地域センター)である。また特に、独立以降、一貫して文化館局の主任研究員として活躍してきた故ミン・ナイン(Min Naing)氏の業績と足跡に関する資料蒐集を継続的に実施した。
|